1 はじめに
当事務所では,裁判所内外の手続を数多く取り扱っています。そして裁判所内の手続には,裁判や調停等の様々な手続があります。
その中で,民事や家事等の終局的な判断を目指す手続は訴訟です。訴訟には,通常の訴訟や人事訴訟,支払督促手続,少額訴訟等があります。
当事務所では様々な訴訟についてご相談やご依頼を受けておりますが,今回は,少額訴訟についてご説明します。
少額訴訟に関する当事務所の実績としては,佐世保市やその付近における,敷金返還請求事件・売買代金請求事件・各種損害賠償請求事件・不当利得返還請求事件等があります。
これらの事件について,当事務所の弁護士が代理人として少額訴訟を進めたり,少額訴訟の訴状等の書類を作成することがよくあります。
まず管轄について,少額訴訟は,地方裁判所ではなく,簡易裁判所を管轄とする訴訟です。そのため,少額訴訟を利用する場合は簡易裁判所に対して提訴しなければなりません。
次に訴額について,少額訴訟は,「少額」というくらいなので,比較的少額を請求する案件でなければ提訴することができません。具体的な金額としては,最大「60万円」と決められています。
少額訴訟の審理について,通常の訴訟は案件にもよりますが回数が少なくても5回程度,多ければ10回以上も期日が開かれるのをよく経験しています。
異議申立て等について,少額訴訟が相手方(被告)に送達された場合,相手方(被告)には,少額訴訟を受け入れるか,それとも通常訴訟に移行してもらうかの選択肢が与えられます。そのため,少額訴訟を提訴したとしても,相手方(被告)が通常訴訟に移行することを選んだら,通常訴訟に移行してしまいます。
通常訴訟に移行せずに少額訴訟としての手続が進んで判決が下された場合,異議を申し立てれば通常訴訟での審理を進めてもらうことができますが,この場合,通常訴訟での審理の結果として判決が下されたら,これに対する不服申立て(地方裁判所に対する控訴)をすることができません。
3 少額訴訟の利用の仕方(弁護士への利用の仕方)について
(1)はじめに
当事務所では,少額訴訟に関するご相談やご依頼が多いところですが,手続の進め方や弁護士の利用の仕方についてはしっかりと考えた方が良いかもしれません。
(2)費用対効果等について
まず,少額訴訟について当法律事務所でご相談を受ける場合,法テラスの相談援助等の利用ができる方であれば,当事務所でも法テラスの相談援助を受けながらご相談を受けることができます。そうでない方の場合は,所定の相談料(原則として30分ごとに5000円+消費税)が発生します。
ここで,ただのご相談だけではなく,少額訴訟について何かしら依頼したいという場合,弁護士費用が発生してしまいます。
具体的には,弁護士を少額訴訟の代理人にしたいという場合,着手金が発生してしまいます。また,弁護士に少額訴訟の書類(訴状等)を作成してほしいという場合,代理人として依頼する場合の着手金よりは少額ですが文書作成料が発生してしまいます。
一方で,上述したとおり,少額訴訟の訴額は60万円以内にする必要があります。
そのため,結果的に,請求する金額に対する弁護士費用の割合が高くなってしまいます。
そういった点も踏まえて,どのようにして少額訴訟を進めるか,ご相談者の皆様と協議させていただくこととなります。
(3)内容や手続等について
少額訴訟は,上述したとおり,1回の審理で終結してしまいます。そのため,相手方(被告)が権利関係の内容等を争うことが想定される場合には不向きな手続だと言われています。
また,少額訴訟で進めてもらえる場合でも,1回の審理で終結するからこそ,提出すべき証拠や訴状の内容は当初からしっかりと固めておく必要があります。
仮に,訴状や証拠の内容が不十分であったり,当初から相手方(被告)が争うような場合は,例えば相手方(被告)が少額訴訟での審理を拒否して通常訴訟に移行してしまったり,少額訴訟で審理されても主張や立証が不十分ということで不利な判決が下されてしまったり,という事態が発生しかねません。
特に,仮に相手方(被告)が少額訴訟での審理を拒否して通常訴訟に移行してしまうと,弁護士を利用する場合には通常訴訟の弁護士費用も発生してしまいます。
相手方(被告)が少額訴訟での審理に同意したとしても,少額訴訟の判決に対して相手方(被告)が不服申立てをした場合,同じく通常訴訟の審理が開始されてしまい,弁護士を利用する場合には通常訴訟の弁護士費用も発生してしまいます。
4 最後に
少額訴訟は,一見簡単に利用できるようにも思えますが,上述したとおり手続的には進行や不服申立て等も含めて理解をした上で利用するのが望ましいので,ご利用される場合,一度は弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
1 はじめに
各弁護士会では,定期的に,各弁護士に対して「裁判官人事評価段階式アンケート」を実施し,取りまとめています。
そのようにして,裁判官・検察官・弁護士が,法曹三者として,日本の司法を担っております。
ここで,裁判官も公務員として,裁判所における所定の人事評価を受けます。
一方で,裁判官については,いわゆる司法の独立ということで,裁判官の職権行使の独立の原則(憲法76条3項)等が定められています。
そこで,裁判官の人事評価については,所定の審議会による審議等がなされながら,慎重に進められております。
具体的には,裁判所によると,裁判所の人事評価について,一次的には裁判所内での人事評価を受けますが,裁判所内部だけでなく,裁判所外部の見方に配慮しうるような適切な方法を検討すべきとされています。
そして,審議会では,「弁護士や検察官等による外部評価を一定期間ごとに行うことによって内部評価とあわせて評価を行うべき」「法曹関係者,裁判利用者の声が反映されて決定していく必要がある」といった意見も出されているようです。
この点については,上述した裁判官の職権行使の独立等との兼ね合いもありますので,「代理人等裁判所外部の者からもたらされる情報の中には,裁判官の執務や裁判所の運営の改善に対して参考となる意見が含まれていることがあるが,それらについては,評価の問題と切り離して,研修その他の場を通じ,裁判官の執務や裁判所運営に生かすことが望まれる」とされているようです。
3 各弁護士会での「裁判官人事評価アンケート」について
以上のことも含めて,各弁護士会で,定期的に,「裁判官人事評価段階式アンケート」が実施されています。もちろん,長崎県弁護士会でも実施されています。
ちなみに,評価の対象となる裁判官は以下のとおり長崎県内の全ての裁判官であり,アンケート項目は以下のとおりです。アンケート項目は,各弁護士会で共通しているものと思われます。
その上で,以下のとおり最終的な評価をA~Dで記載しますます。
◆アンケート項目
・全般
・審理を主催する能力
※争点を的確に近いし,事件の筋を見通しながら進めているか。
無方針のまま審理を継続したり,判断を回避して判決延期を繰り返したりしていないか。
・審理に応じた柔軟性
※当事者の主張に耳を傾け,柔軟な姿勢で審理に臨んでいるか。
自分の当初の判断に固執したり,和解案を当事者に押し付けていないか。
高圧的姿勢や乱暴な言葉遣いはないか。公平に接しているか。
・民事
・証人等採否の適否
・和解案の妥当性
・判決の説得力
・刑事
・証人等採否の適否
・判決の説得力
・家事・人事
・証人等採否の適否
・和解案等の妥当性
・審理・判決の説得力
・少年
・証人等採否の適否
◆評価について
C 問題点について研鑽を重ねてほしい
4 最後に
当事務所の弁護士も,上述した裁判官の人事評価アンケートに協力し,裁判所への裁判官人事評価のための情報提供に協力しております。
特に,当事務所では,佐世保市の裁判所だけでなく,特に長崎市の裁判所や諫早市・大村市・平戸市・島原市の裁判所等,多くの裁判所の案件に携わっているため,多数の裁判官の案件を取り扱っております。
今回当事務所で回答したアンケート内容と,長崎県弁護士会で取りまとめの結果は概ね符号しており,いろいろと思うところがある結果となりました。
今後も,よりよい司法となるよう,法曹三者で情報共有しながら案件の処理を進めてまいりたいと思います。
1 民事信託とは
民事信託(家族信託)とは,簡単にいうと,委託者が,受託者に対して,信託財産となる財産を管理・運用・処分できる権利を渡すことです。
高齢化社会が近年進んでいることにより,当法律事務所でも,高齢者の方々の財産管理や相続問題・遺言問題等が増えています。
その中で,高齢者の方々の財産に関するトラブルや問題を解決する方法として,任意後見・法定後見・贈与,遺言,遺産分割,成年後見信託(信託会社との信託契約に基づく信託)等がありますが,そのような方法のひとつとして,民事信託(家族信託)という方法もあります。
2 民事信託のメリット
民事信託(家族信託)には,例えば以下のようなメリットがあります。
・遺言の代わりに財産の帰属先を決められる
・財産の管理・処分と利益の分離ができる
・相続後に残された人(障害がある子ども等)の生活が保障できる
・3世代にわたって財産の承継先を決められる
・中小企業の経営者が,起業の株式を信託して事業承継に利用できる
3 民事信託の手続
民事信託を具体的に進める場合,まずは専門家に相談していただくことが無難です。具体的には,法律論も必要となりますので,弁護士が望ましいと言われています。
専門家に相談した後は,専門家のアドバイスに沿って契約書を作成することになると思います。なお,契約書の作成について,弁護士としては,公証人が作成する信託契約公正証書という選択肢も検討しています。
そして,信託財産に不動産が含まれる場合には,「所有権移転登記」や「信託登記」等の登記手続をすることとなります。
その他,信託財産が悪用されないよう,信託口口座の開設も必要となります。
4 民事信託における弁護士の役割
民事信託の手続が進められる場合,ケースにもよりますが,公証人(公証人役場)・金融機関・司法書士・税理士等の連携が必要となります。
ここで,弁護士であれば,司法書士や税理士としての役割を果たすこともできますが,公証人・金融機関・司法書士・税理士等の間で,弁護士がいわばコーディネーター役割を果たす方が,より健全な進め方といえそうです。弁護士であれば,その弁護士にもよりますが,司法書士業や税理士業に対する理解も一定程度進んでいます。
5 当法律事務所と民事信託
近年は,当事務所が所在する佐世保市でも,民事信託(家族信託)に関するご相談やご依頼が増えてきています。
なお,当事務所には,佐世保市のみならず,近隣の地域(平戸市・松浦市・西海市・川棚町・東彼杵町・伊万里市・有田町・武雄市)等からのご相談も多く寄せられております。
当事務所では,事務所内に様々なスキルを持った弁護士や事務局がいますが,特に民事信託等では,事務所内にとどまらず,日頃より連携している事務所外の専門家や専門機関とより連携して手続を進めております。
そのような理由から,比較的多くの案件を処理させていただいていると思います。
今回は,民事信託(家族信託)のメリットや手続等に軽く触れましたが,民事信託には,デメリット等もあります。
そのようなデメリット等を理解した上で手続を進める必要もありますし,もしご相談ごとがありましたら,いつでもお気軽にご連絡ください。