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判例(裁判例)紹介
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養子縁組が無効とされた事例(H22.4.15判決)
本件は,亡Aの兄であるXが,亡Aは入院中にYと知り合い2か月ほどAの家で同居した後に同人との間で養子縁組の届出をしているが,当時,亡Aには意思能力がなく,また,亡AとYとの間の養子縁組には合理的動機がないなどとして,養子縁組の無効確認を求めた。原審は本件養子縁組を無効としたため,Yが控訴した。
(裁判所の判断)
裁判所は,一般論として,養子縁組における縁組意思は,社会通念に照らして真に養親子関係を生じさせようとする意思によるものであることが必要というべきであり,こうした意思を含まず,単に何らかの方便として養子縁組の形式を利用したに過ぎない場合は,縁組意思を欠くものとして,その養子縁組は無効というべきである。もとより,養親子関係の社会的な在り方は多様であるから,上記の養親子関係を生じさせようとする意思の内容を一義的に言うことは困難であるが,少なくとも親子としての精神的なつながりを形成し,そこから本来生じる法律的または社会的な効果の全部または一部を目的とするものであることが必要であると解するのが相当であるとした。
そして,本件について,AはYと入院中に知り合い,Aの家でYと同居するようになってからわずか2か月ほど後に本件養子縁組の届出がなされたこと,YとAがA方で同居したのは,通算4か月にも満たないこと,その間,Yが血縁関係もないAの看護や日常の世話に意を配ったような経過はうかがわれず,Aが入院した際は,保健所の職員によって入院させられるほどの重篤な状態に陥っていたこと,また,Aの葬儀の際,控訴人は香典を受け取ったにもかかわらず,香典返しもしておらず,その一方で,Yは,その間に,Aの資産を基にして,高級外車を乗り換えるなどの散財行為とも見られる行為に及んでいることなど,XがAの資産に依存した消費行動を示しており,ほかには,Yが,養親子という社会一般の身分関係を意識した行動を示した形跡は何らうかがうことができない。そして,XとAの間で,親族関係の形成を前提とした会話がなされたような経緯はうかがわれず,X自身,自分とAが本件養子縁組をする目的や理由,趣旨を理解しているものとは認められない。
他方,Aは本件養子縁組に近接した時点において,前頭側頭葉型認知症の疑いを持たれており,躁状態による脱抑制,人格変化が認められ,病識の欠如から問題行動も起こすなどしており,合理的な判断能力が相当に減退した状態にあったと認められること,AはXがGとの交際に反対したり,医療保護入院をさせたり,後見開始申立てをしたことなどについて反感を示しており,こうしたXに対する思慮を欠いた反発感情から,同人への相続を阻止する目的で本件養子縁組に及んだものとうかがわれるところ,それ以上には,Yとの間に養親子という親族関係を形成する意思があったことをうかがわせる経緯は一切認められないとした。
そうすると,本件養子縁組は,Aが,Xとの養親子関係という真の身分関係を形成する意思とは異なり,Yへの相続を阻止するための方便として,Xとの養子縁組という形式を利用したにすぎないものと認められるから,養子縁組意思を欠くものというべきであって,無効といわなければならないとした。
(竹口・堀法律事務所) 2014年10月28日 22:38
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