竹口・堀法律事務所


弁護士ブログ


少額訴訟について(R6.7)


2024/07/02 11:54

1 はじめに
 
 当事務所では,裁判所内外の手続を数多く取り扱っています。そして裁判所内の手続には,裁判調停等の様々な手続があります。
 その中で,民事や家事等の終局的な判断を目指す手続は訴訟です。訴訟には,通常の訴訟や人事訴訟,支払督促手続,少額訴訟等があります。
 
 当事務所では様々な訴訟についてご相談やご依頼を受けておりますが,今回は,少額訴訟についてご説明します。
 
 少額訴訟に関する当事務所の実績としては,佐世保市やその付近における,敷金返還請求事件・売買代金請求事件・各種損害賠償請求事件・不当利得返還請求事件等があります。
 これらの事件について,当事務所の弁護士が代理人として少額訴訟を進めたり,少額訴訟訴状等の書類を作成することがよくあります。
 
 
2 少額訴訟について
 
 まず管轄について,少額訴訟は,地方裁判所ではなく,簡易裁判所を管轄とする訴訟です。そのため,少額訴訟を利用する場合は簡易裁判所に対して提訴しなければなりません。
 
 次に訴額について,少額訴訟は,「少額」というくらいなので,比較的少額を請求する案件でなければ提訴することができません。具体的な金額としては,最大「60万円」と決められています。
 
 少額訴訟の審理について,通常の訴訟は案件にもよりますが回数が少なくても5回程度,多ければ10回以上も期日が開かれるのをよく経験しています。
 一方で少額訴訟は,1回のみの審理で終結します。
 
 異議申立て等について,少額訴訟が相手方(被告)に送達された場合,相手方(被告)には,少額訴訟を受け入れるか,それとも通常訴訟に移行してもらうかの選択肢が与えられます。そのため,少額訴訟を提訴したとしても,相手方(被告)が通常訴訟に移行することを選んだら,通常訴訟に移行してしまいます。
 通常訴訟に移行せずに少額訴訟としての手続が進んで判決が下された場合,異議を申し立てれば通常訴訟での審理を進めてもらうことができますが,この場合,通常訴訟での審理の結果として判決が下されたら,これに対する不服申立て(地方裁判所に対する控訴)をすることができません。
 
3 少額訴訟の利用の仕方(弁護士への利用の仕方)について
 
(1)はじめに
 
 当事務所では,少額訴訟に関するご相談やご依頼が多いところですが,手続の進め方や弁護士の利用の仕方についてはしっかりと考えた方が良いかもしれません。
 
(2)費用対効果等について
 
 まず,少額訴訟について当法律事務所でご相談を受ける場合,法テラスの相談援助等の利用ができる方であれば,当事務所でも法テラスの相談援助を受けながらご相談を受けることができます。そうでない方の場合は,所定の相談料(原則として30分ごとに5000円+消費税)が発生します。
 ここで,ただのご相談だけではなく,少額訴訟について何かしら依頼したいという場合,弁護士費用が発生してしまいます。
 具体的には,弁護士を少額訴訟の代理人にしたいという場合,着手金が発生してしまいます。また,弁護士に少額訴訟の書類(訴状等)を作成してほしいという場合,代理人として依頼する場合の着手金よりは少額ですが文書作成料が発生してしまいます。
 一方で,上述したとおり,少額訴訟の訴額は60万円以内にする必要があります。
 そのため,結果的に,請求する金額に対する弁護士費用の割合が高くなってしまいます。
 
 そういった点も踏まえて,どのようにして少額訴訟を進めるか,ご相談者の皆様と協議させていただくこととなります。
 
(3)内容や手続等について
 
 少額訴訟は,上述したとおり,1回の審理で終結してしまいます。そのため,相手方(被告)が権利関係の内容等を争うことが想定される場合には不向きな手続だと言われています。
 また,少額訴訟で進めてもらえる場合でも,1回の審理で終結するからこそ,提出すべき証拠や訴状の内容は当初からしっかりと固めておく必要があります。
 
 仮に,訴状や証拠の内容が不十分であったり,当初から相手方(被告)が争うような場合は,例えば相手方(被告)が少額訴訟での審理を拒否して通常訴訟に移行してしまったり,少額訴訟で審理されても主張や立証が不十分ということで不利な判決が下されてしまったり,という事態が発生しかねません。
 
 特に,仮に相手方(被告)が少額訴訟での審理を拒否して通常訴訟に移行してしまうと,弁護士を利用する場合には通常訴訟の弁護士費用も発生してしまいます。
 相手方(被告)が少額訴訟での審理に同意したとしても,少額訴訟の判決に対して相手方(被告)が不服申立てをした場合,同じく通常訴訟の審理が開始されてしまい,弁護士を利用する場合には通常訴訟の弁護士費用も発生してしまいます。
 
4 最後に
 
 少額訴訟は,一見簡単に利用できるようにも思えますが,上述したとおり手続的には進行や不服申立て等も含めて理解をした上で利用するのが望ましいので,ご利用される場合,一度は弁護士にご相談いただくことをお勧めします。


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