竹口・堀法律事務所


判例(裁判例)紹介


交通事故の裁判例(京都地判平成26年2月4日損害賠償請求事件)


2014/10/16 20:22

(はじめに)
 当事務所では,多数の交通事故案件を取り扱っていることから,今回は,交通事故について気になった裁判例(京都地判平成26年2月4日損害賠償請求事件(平成25年(ワ)第126号))をご紹介いたします。
 
(事案の概要)
 Aは加害車両を運転中,事故現場の交差点手前において,前方を走行中のタクシーに追突したが,そのまま加速しながら,交差点手前で信号待ちのため停車中の車を追越し,赤色信号を無視して交差点に進入した。
 その際,Aの運転する車両は,横断歩道を歩行中のBを跳ね,電柱に衝突して停止した。B(当時68歳)は,衝突後,約1時間後に死亡し,Aも同日,死亡した。
 そこで,Bの相続人らは,Aの相続人ら及びAの会社(車の保有者)に対し,損害賠償を請求した。
 
(京都地方裁判所の判断について)
 本件における主たる争点は,損害額である。裁判所は,特に,死亡慰謝料について,Bは,本件事故当時68歳の健康な主婦であり,夫と2人の息子の家事一切を1人で担うとともに,急性骨髄性白血病を発症し療養中であったX2の付添看護を主に担っていたこと,制限速度を超える速度で,かつ赤信号を無視して歩行者が多数横断中の本件交差点に加害車両を進入させ,横断中のBをはねて負傷させながら,加害車両を停止させて救護する等の措置を講じることもなかったAには重大な過失がある一方,横断歩道を青信号にしたがい歩行していたBには何らの落ち度もなく,事故態様は悪質であること,楽しい花見のはずが一転,このような事故に巻き込まれて重傷を負い,蘇生もかなわず,家族に別れを告げるいとまもないまま命を奪われ,夫や子らとりわけ病気療養中の子の将来を見届けることができなかったBの苦痛や無念,心残りは図り知れないこと等から,2700万円を認めた。
 逸失利益については,Bが68歳の主婦であり,夫及び子の合計3人と同居し,家事一切を担っていたこと,X2は,急性骨髄性白血病を発症し,抗ガン剤治療や骨髄移植のために入通院を繰り返し,本件事故当時も2週間に1度の通院治療を要する状態にあったところ,その付添看護は主にBが行っていたこと等,X2の付添看護を含むBの家事労働の内容から,女性労働者全年齢平均賃金を基礎収入とし,就労可能年数については平均余命の約半分,家事分にかかる生活費控除率は50%として家事分の逸失利益を1478万1238円と認定した。その他,年金分の逸失利益についても認定している。 

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