竹口・堀法律事務所


トピックス


相続に関するルールが大きく変わりました


2020/04/12 11:34

平成30年7月に,相続法制の見直しを内容とする「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と,法務局において遺言書を保管するサービスを行うこと等を内容とする「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立しました。

法務省が「相続に関するルールが大きく変わります」というパンフレットを作成しておりますが、
改正ポイントについて分かりやすくまとめられているのでご紹介致します。



【相続に関するルールが大きく変わります】
平成31年1月13日から段階的に施行されます。

1配偶者居住権の創設
※令和2年4月1日(水)施行
Point

配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に,配偶者は, 遺産分割において配偶者居住権を取得することにより,終身又は一定期間,その建物に無償で居住することができるようになります。被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させることもできます。

20200412-1.jpg

2婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
※令和元年7月1日(月)施行
Point

婚姻期間が20年以上である夫婦間で居住用不動産(居住用建物又はその敷地)の遺贈又は贈与がされた場合については,原則として,遺産分割における配偶者の取り分が増えることになります。

20200412-2.jpg

3預貯金の払戻し制度の創設
※令和元年7月1日(月)施行
Point

預貯金が遺産分割の対象となる場合に,各相続人は,遺産分割が終わる前でも,一定の範囲で預貯金の払戻しを受けることができるようになります。

20200412-3.jpg

4自筆証書遺言の方式緩和
※平成31年1月13日(日)施行
Point

自筆証書遺言についても,財産目録については手書きで作成する必要がなくなります。※ もっとも,財産目録の各頁に署名押印をする必要があります。

20200412-4.jpg

5法務局における自筆証書遺言書保管制度の創設について
※令和2年7月10日(金)施行(法務局における遺言書の保管等に関する法律)
国300か所以上の法務局(本局・支局)で実施します。


20200412-5.jpg

6遺言の活用
遺言とは,自分が死亡したときに財産をどのように分配するか等について,自己の最終意思を明らかにするものです。遺言がある場合には,原則として,遺言者の意思に従った遺産の分配がされます。また,遺言がないと相続人に対して財産が承継されることになりますが,遺言の中で,日頃からお世話になった方に一定の財産を与える旨を書いておけば(遺贈といいます),相続人以外の方に対しても財産を取得させることができます。このように,遺言は,被相続人の最終意思を実現するものですが,これにより相続をめぐる紛争を事前に防止することができるというメリットもあります。また,家族の在り方が多様化する中で,遺言が果たす役割はますます重要になってきています。我が国においては,遺言の作成率が諸外国に比べて低いといわれていますが,今回の改正により,自筆証書遺言の方式を緩和し,また,法務局における保管制度を設けるなどしており,自筆証書遺言を使いやすくしています。遺言には,下記図のとおり公正証書遺言もありますが,作成される方のニーズに応じて使い分けていただければと思います。
20200412-6.jpg

7遺留分制度の見直し
※令和元年7月1日(月)施行
Point
(1)遺留分を侵害された者は,遺贈や贈与を受けた者に対し,遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができるようになります。
(2)遺贈や贈与を受けた者が金銭を直ちに準備することができない場合には,裁判所に対し,支払期限の猶予を求めることができます。

20200412-7.jpg

8特別の寄与の制度の創設
※令和元年7月1日(月)施行
Poin
t
相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には,相続人に対して金銭の請求をすることができるようになります。

20200412-8.jpg

■相続法についてのQ&A
ここでは,今回の相続法の見直しに関する内容も含め,相続法についてよくある質問内容をQ&A方式でまとめています。

Q1相続とは何ですか?
民法では,人が死亡すると,その人の財産は相続人に承継されることとされています。承継される財産には,預貯金や不動産などの積極財産だけでなく,銀行に対するローンなどの債務(消極財産)も含まれます。なお,債務の額が大きい場合などには,相続が開始されたことを知った時から3か月以内に,家庭裁判所に申述することにより相続放棄をすることができます。

Q2今回の改正では,配偶者短期居住権という権利も設けられたとのことですが,どのような権利ですか?
今回の改正では,配偶者短期居住権という権利を創設し,配偶者が相続開始の時に遺産に属する建物に住んでいた場合には,一定の期間(例えば,その建物が遺産分割の対象となる場合には,遺産分割が終了するまでの間)は,無償でその建物を使用することができるようにしています。

Q3配偶者居住権が設定された居住建物の固定資産税は誰が負担することになりますか?
固定資産税の納税義務者は,原則として固定資産の所有者とされており,配偶者居住権が設定されている場合であっても,居住建物の所有者が納税義務者になるものと考えられます。もっとも,改正法においては,居住建物の通常の必要費は配偶者が負担することとされており,固定資産税は通常の必要費に当たると考えられます。したがって,居住建物の所有者は,固定資産税を納付した場合には,配偶者に対して求償することができると考えられます。

Q4預貯金の払戻しについて,今回2つの制度が設けられたとのことですが,両制度の関係はどうなっていますか?
今回の改正で,遺産分割前に預貯金の払戻しを認める制度として,①家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払戻しを認める方策と,②家庭裁判所の判断を経て預貯金の仮払いを得る方策の2つの方策が設けられました。①の方策については限度額が定められていることから,小口の資金需要については①の方策により,限度額を超える比較的大口の資金需要がある場合については②の方策を用いることになるものと考えられます。

Q5今回の改正により,自筆証書遺言の方式が緩和されたとのことですが,全文パソコンで作成してもいいのですか?
全文パソコンで作成することはできません。今回の改正では,自筆証書遺言に添付する財産目録については手書きでなくてもよいこととしていますが,遺言書の本文については,これまでどおり手書きで作成する必要があります。

Q6どの法務局に遺言書保管の申請をすることができるのですか。
遺言書の保管の申請は,遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所(法務大臣の指定する法務局)の遺言書保管官(法務局の事務官)に対してすることができます。なお,遺言書保管所の指定及び具体的な管轄については,施行日(令和2年7月10日)までの間に定めることとなります。

Q7保管の対象となる遺言書はどのようなものですか。
保管の申請の対象となるのは,自筆証書による遺言書のみです。また,遺言書は,封のされていない法務省令で定める様式に従って作成されたものでなければなりません。なお,具体的な様式については,施行日(令和2年7月10日)までの間に定めることとなります。

Q8遺言書の保管には費用はかかるのですか。
遺言書の保管の申請,遺言書の閲覧請求,遺言書情報証明書(遺言書の画像情報等を用いた証明書)又は遺言書保管事実証明書(法務局における遺言書が保管されているかどうかを証明した書面)の交付の請求をするには,手数料を納める必要があります。なお,具体的な手数料の額については,施行日(令和2年7月10日)までの間に定めることとなります

Q9遺留分とは何ですか?遺留分を侵害された者は,誰にいくら請求できるのですか?
遺留分とは,兄弟姉妹以外の相続人について,その生活保障を図るなどの観点から,最低限の取り分を確保する制度です。今回の改正により,遺留分を侵害された相続人は,被相続人から多額の遺贈又は贈与を受けた者に対して,遺留分侵害額に相当する金銭を請求することができるようになります。遺留分及び遺留分侵害額については,次の計算式により算定します。

遺  留  分=(遺留分を算定するための財産の価額(注1))×(2分の1(注2))×(遺留分権利者の法定相続分)

遺留分侵害額=(遺留分)−(遺留分権利者の特別受益の額)−(遺留分権利者が相続によって得た積極財産の額)+(遺留分権利者が相続によって負担する債務の額)


(注1)遺留分を算定するための財産の価額=(相続時における被相続人の積極財産の額)+(相続人に対する生前贈与の額(原則10年以内))+(第三者に対する生前贈与の額(原則1年以内))−(被相続人の債務の額)
(注2)直系尊属のみが相続人である場合は3分の1

Q10いつから改正法は施行されるのですか?
改正法の規定は,以下のとおり,段階的に施行されることとされています。
○民法等の一部改正法 
①自筆証書遺言の方式を緩和する方策 平成31年1月13日
②預貯金の払戻し制度,遺留分制度の見直し,特別の寄与等(①,③以外の規定)令和元年7月 1日
③配偶者居住権(配偶者短期居住権を含む。)の創設等 令和2年4月 1日
○遺言書保管法 令和2年7月10日

出典
法務省発行
「相続に関するルールが大きく変わります」パンフレット

上記パンフレットや相続法の改正について、法務省のホームページでも確認ができます。



改正された相続の制度が運用されるにあたっては、さまざまなトラブルが発生することも予想されます。
また、時代に合わせた相続対策や手続きを行うためにも、専門家である弁護士に相談することをおすすめ致します。
当事務所では初回相談を30分無料としております。
相続や遺産分割・遺言等についてお悩みの方はぜひお気軽にご相談下さい。


< 前へ一覧次へ >

このページの先頭へ[1]

HOME[0]


事務所のご案内
お問い合わせ
プライバシーポリシー

Copyright (C) 竹口・堀法律事務所
All rights reserved.