長崎県佐世保市の竹口・堀法律事務所

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判例(裁判例)紹介

物損(車両の損害)(H24.3.15)

(はじめに)
 当事務所でご依頼の多い交通事故案件について,今回は,物損(損害賠償請求)に関する裁判例(東京地判平成24年3月15日(平成23年(レ)第1478号 損害賠償請求控訴事件)をご紹介いたします。
 
(事案の概要)
 本件は,Yが運転する自動車とXが使用するタクシー車両(LPガス車,以下「本件車両」という。)との間で発生した交通事故により,本件車両が損傷を受け,損害を被ったとして,Xが,Yに対し,不法行為(民法709条)に基づき,本件車両の修理代金相当額及びこれに対する不法行為の後である訴状送達日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めた事案である。
 Yは,LPガス車には中古車市場がないから,法定耐用年数(3年)を基準として定率法により減価償却して本件車両の時価額を算定すべきであるとし,本件車両は初年度登録から既に3年9か月を経過しており,修理代金は時価額を超え,経済的全損となると主張した。
 原審は,経済的全損にはならないとして,Xの請求を全部認容したため,これを不服としてYが控訴した。
 
(東京地方裁判所の判断)
 本件の争点は,本件車両の損害額である。
 控訴審である裁判所(東京地裁)は,本件車両は,中古車市場が存在しないLPガスを使用し走行距離が約40万キロメートルに達するタクシー車両であるから,中古車市場が存在する同一車種,同一年式のガソリン車を使用する自家用車両の中古車価格を参考としても,その時価を合理的に認定することは困難であるとし,他方,自動車の時価が税法上の減価償却後の価格と一致するものでないこともまた明らかであって,法定耐用年数を基準として定率法により減価償却をしても,自動車の時価を適切に認定することはできないことから,本件については,タクシー車両の一般的な使用期間を基準として定率法により本件事故当時の本件車両の時価を算出し,これをもって本件車両の時価と認めるのが最も合理的であるというべきとした。
 そして,タクシー車両の一般的な使用期間を5年,最終残価率を10パーセントとして,タクシーの時価を算出した上,再取得費用としてタクシーとしての装備に要する費用を加算した額が,修理費用を上回るから,経済的全損とはならないとして,修理費用相当額を損害と認定し,控訴人の控訴を棄却した。
 
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