「逸失利益」とは,一般的に,債務不履行や不法行為がなければ将来得られたはずの利益のことをいいますが,一番よく問題となるのは,交通事故の案件です。
具体的には,交通事故が発生し,被害者に傷害が生じたため治療を行い,症状固定となったとします。
その後,後遺障害が認定されたとすると,その後遺障害の等級に応じて,長期間にわたって発生する収入減少を一時金として算定し直して,加害者に請求することとなります。
「逸失利益」の算定に関する一般的な考え方は,おおむね以下のとおりです。
① 「基礎収入×労働能力喪失率×喪失期間に対応するライプニッツ係数」という算定方式で算定します。
② 基礎収入額については,原則として事故前の現実収入の金額とします。もっとも,現実収入額以上の収入を将来得られると認められる場合には,その金額を算定基礎とします。
③ 労働能力喪失率については,自賠責保険の後遺障害等級に対応する労働能力喪失率を基準として,「職種,年齢,性別,障害の部位・程度,減収の有無・程度や生活上の障害の程度などの具体的稼働・生活状況」などに基づいて,喪失割合を定めます。
④ 原則として,就労可能年限まで喪失するものとします。ただし,比較的軽度の機能障害や神経障害については,その内容・程度と労働・社会生活への適応見込みなどの具体的状況により,喪失期間が限定されることがあります。
交通事故の案件では,逸失利益が問題となることがよくあります。
特に,他覚症状がなく自覚症状しかないむち打ち症(頚椎捻挫)などは,相手方の保険会社が逸失利益の金額を低く見積もることが多いです。
ですので,交通事故が発生した場合には,一度弁護士に相談してから,示談をすることをお勧めします。